ケース加工の方法(板金加工の方法)

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直径の小さな穴をあける(Φ6mm程度まで)

 ケースや板金に穴をあける場合、直径6ミリ程度までなら、ドリルを使うのが一般的です。ドリルにはアルミなどの板金には「鉄工用ドリル」を使います。

鉄工用ドリルの例

穴あけ工具

 一番安いのは、手回しで使うハンドドリルで鉄工用ドリルをくわえて穴をあける方法ですが、大昔は国産の精度の高いハンドドリルが売られていたのですが、現在はまともに回せなかったり、ドリルチャックの中心がブレているものも多いので、購入の際には注意が必要です。

 ハンドドリルがむき出しで売られている場合は、とりあえず回してみて、ドリルチャックの中心がブレないかチェックして購入してください。

穴の数が多い場合は電動ドリルが便利

 ハンドドリルで多くの穴加工をすると、当然ながら手が疲れますので、穴加工の数が多い場合は電動ドリルが便利です。

 電動ドリルには、模型工作用の数千円のものから、いわゆる「電気ドリル」と呼ばれる工事業者が使うような本格的な数万円のものまでありますが、穴の直径が4ミリ程度までなら、模型用の電動ドリルでも何とかなります。

数千円の模型用電動ドリルの例

 ただし、模型用の電動ドリルは、連続使用時間が10分程度の制限があったり、使えるドリルの刃も専用の六角シャフトのものでないと使えなかったりしますが、六角シャフトのドリルはダイソーなどの百均でも売られていますし、現在では敷居は低いです。

 でも、回転させる力である「トルク」が小さく、直径4mmを超えるようなドリルでは摩擦で回らなくなって電動ドリルのモーターが焼き付いて壊れる恐れもあります。

プロ用の電気ドリルを使う

工事業者が使う数万円の電気ドリル

 電気工事士やエアコン工事業者などのプロが使う電気ドリルであれば、直径10ミリ程度までの穴なら簡単に穴あけ加工することができます。

 特にこの写真のような「無段変速」が可能な電気ドリルであれば、0~2400rpm(毎分0~2400回転)まで人差し指の力加減で変速できますので、ドリルの中心合わせや、大径のドリルやホールソーでも安心して使うことができます。

 私はあまり腕力がないので、無段変速できない電気ドリルを使うと回し始めの反動で手首をひねられてしまい、怖いうえに中心がズレるという恐ろしい結果になりますので、無段変速はとっても有難いです。

 また、ハンドドリルや模型用電動ドリルでは、6.5mm以上のドリルがチャックに入らなくて、高価な段付きドリルを買わないといけなくなりますが、この電気ドリルでは直径10ミリまでチャックに入りますので、直径10mmの下穴が必要なことが多いシャーシーパンチを使って大きな穴を綺麗にあけたい場合にも便利です。

高価な大径の段付きドリルの例

 ただ、気を付けないといけないのは、手持ちするとドリルが斜めになって、中心がズレたり、最悪の場合はドリルが折れて破片が目に飛んでくることもありますので、必ず「保護メガネ」を使用して、まっすぐにドリルを当てるようにしなくてはなりません。

ドリルスタンドを買うと安全にまっすく綺麗に穴加工できる

数千円のドリルスタンド

たくさん穴加工するならボール盤

 多くの穴加工をするなら、1万円ほどから買える小型のボール盤をお勧めします。ボール盤は安全にまっすぐ穴をあけられる加工機械で、厚さのある金属や樹脂などにも穴をあけることができます。

 ただし、無段変速のものは少ないので、大きな穴をあけたい場合は、無段変速の電気ドリルとドリルスタンドを使うほうが安全です。大径のドリルやホールソーを高速で回転させると加工対象物(ワーク)が高速で回転したりして非常に危険ですし、刃が折れて飛んでくる可能性もありますし、チャックに袖などが巻き込まれて大怪我をする可能性がありますので、細心の注意が必要です。

小型ボール盤の例
本格的なボール盤の例(※ただし非常に危険な機械

中くらいの穴(7mm~40mm)をあけるならシャーシーパンチ

穴を広げるテーパーリーマーの例

 下穴をあけてテーパーリーマーを使えば、穴を広げることができますが、バリ(金属のゲジゲジ)が凄く出て、ヤスリがけなどで汚くなりますし、あまりお勧めしません。穴が隠れてしまう部品であれば、まだ何とかなりますが、穴が見える部品の場合は次に説明するシャーシーパンチを使ったほうが良いでしょう。

 中くらいの穴を綺麗にあけるなら、ドリルで10ミリの下穴をあけてボルトで刃を締め付けてプレスするシャーシーパンチが便利です。

 下穴をあける必要のない「ホールプレスベンチ」も便利ですが、10万円近くするため、つねに穴をあけるほどでないと費用対効果が良くないでしょう。

シャーシーパンチの例

角穴をあけるならハンドニブラー

 角穴をあけたい場合、一番費用が安く済むのは、ドリルで多くの穴をあけ、穴の間をニッパーで切り、ガタガタになったケースをヤスリで仕上げる方法ですが、綺麗に角穴をあけるのが難しいため、10ミリ程度の下穴をあけて、ハンドニブラーで食いちぎって穴を広げ、ヤスリで仕上げるのが現実的です。

ハンドニブラーの例(写真左の先端部で板金を食いちぎる)

 ただし、大きな角穴をあけたい場合、ハンドニブラーを思い切り数十回~数百回も握らなければならず、手が腱鞘炎になる可能性もありますし、食いちぎる際に、その周囲に傷が付きますので、綺麗に仕上げるのが困難です。

ハンドニブラーであけた角穴の例(※台形になりやすい)

フライス盤を使えば楽に角穴をあけられるが角が丸くなる

小型フライス盤の例

 フライス盤を使えば下穴なしで楽に角穴をあけられますが、エンドミルと呼ばれる端面と側面の両方で削り取れる刃を使うため、どうしても角にRがついて丸くなり、本当の意味での角穴はあけられません。

フライス盤であけた角穴の例(※角が丸くなる)

 直径の細いエンドミルを使えば、R0.5とかの角穴をあけることは理論的には可能ですが、エンドミルが細いと、一度に削れる量が少なく、とてつもない時間がかかりますし、刃が折れやすく不経済です。

フライス盤で使うエンドミルの例

 表示窓などの角穴でしたら、角が丸いほうが良かったりしますが、角型のスイッチなどでは角が丸いと取り付けられませんので、最後にヤスリで直角に仕上げるしかなく、綺麗に角穴をあけることが事実上不可能です。

 なお、エンドミルは削る際に横方向に押しのける力が働き、加工対象物が動いてしまうために「ボール盤などでは使えず、フライス盤または「XYテーブル」でしっかりと固定しないとなりません。

角穴が必要な部品は可能な限り使わない!

 そのため、角穴が必要な部品は出来るだけ使わないのが一番です。角型のスイッチなどでも丸い穴に付けられるものもありますし、USBコネクターやHDMIコネクターなどでも、値段は張りますが、丸穴に取り付けできるものもあります。

丸穴に取り付けられる角型のスイッチ