トランジスタの選び方

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トランジスタ各種 未分類
トランジスタ各種
  • 耐電圧
  • 耐電流
  • 耐電力(発熱量)
  • 動作速度
  • 形状
  • 価格
トランジスタ各種

トランジスタの種類

 トランジスタは大きな電流を小さな電流または電圧で制御できる(増幅作用)半導体素子で、上の写真の例のように大きさにより耐えられる電力や電圧や電流や使える周波数などが異なり、数多くの種類があります。

小信号用トランジスタ

小型トランジスタ各種

電力用トランジスタ(パワートランジスタ)

 大電力用トランジスタには普通は放熱が必要で、下の写真のような放熱板が取り付けられる場合があります。

トランジスタ用放熱板(ヒートシンク)の例

トランジスタ型番の意味

  • 最初の数字は端子数(足の数)から1を引いた数字(0:フォトトランジスタ,1:ダイオード,2:トランジスタ,3:シールド付トランジスタや2ゲート電界効果トランジスタなど)
  • 次は必ずS(semiconductor:半導体)
  • トランジスタの種類による分類のアルファベット1文字(A~M)
  • 日本での登録順の番号

 電車のVVVFインバータ(可変周波数可変電圧)などで使われるGTOサイリスタ(通常のサイリスタと異なりゲートに逆電圧を印加することでターンオフ可能)やIGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)などは代替がほぼ不可能なのと、車両メーカーでしか使わないため、調べることは困難ですし、入手は絶望的です。

高周波用と低周波用

 大昔はラジオに使える高周波用は貴重で、値段も高いうえに性能もあまり良くなく、アンプや電卓などに使われる低周波用は値段も安く増幅率などの性能も良かったため、分けて使われました。

 また、初期のトランジスタはPNP形が主流でしたので、プラスをアースにする回路が多かった関係で、初期のトランジスタは2SAまたは2SBばかりでしたが、トランジスタの製造技術が改良されると、PNP型とは極性が逆の2SCや2SDが増えてきました。

 トランジスタの製造技術が高まるとともに、使える周波数も高くなり、低周波用と高周波用を区別しなくても高周波用の2SCで高周波用は低周波用を兼ねることが多くなり、2SCタイプが多くなりました。

 しかし、B級プッシュプル・アンプなどで、値段が高くて重くて性能が悪いトランスを使わない出力トランスのないOTL(Output Transformer Less)アンプが主流になると、極性が逆の2SAまたは2SBタイプが必要になり、2SAと2SBもいくらか増えました。現在は低音が出にくい出力のコンデンサをなくしたOCL(Output Capacitor Less)またはBTL(Balanced Transformer Less)アンプが主流です。

トランジスタの用途

  • 2SA → 大昔のラジオや一昔前のアンプなど
  • 2SB → 大昔のアンプや電卓や一昔前のアンプなど
  • 2SC → 大昔のテレビや一昔前のアンプなど
  • 2SD → 大昔のアンプや電源回路など
  • 2SE → 見たことありません
  • 2SF → 電球の明るさを変える調光器やチョッパ電車など
  • 2SG → あまり見ません
  • 2SH → 回路図でしか見たことありません
  • 2SJ → 最近のアンプやエアコンや電車などのインバーター
  • 2SK → 最近のアンプやエアコンや電車などのインバーターや電磁石のドライブ回路
  • 2SM → 調光器やモーターの調速機など

 とういように、新しく設計する電子機器では、2SKかプッシュプルのアンプでは、2SJ+2SKを使うのが一般的です。

 これらの電界効果トランジスタは省電力で、動作速度が速く、発熱が少ないなどの利点が多くあり、リレーなどの部品を完全に置き換えることのできる、双方向性(交流をオンオフできる)などの優れた特徴があり、実際にフォトMOSリレーなどという名前でリレーの置き換えにも使われています。

 欠点としては静電気や過電圧に弱いことで、高電圧を加えたり、近くで雷が落ちたり、冬場に化学繊維の服を着て扱ったりすると壊れることがあります。

最近の電子機器は雷が聞こえたらコンセントから外せ!

絶対最大定格

 トランジスタを使う上で、必ず守らないといけない定格で、最大使用電圧、最大電流、最大発熱などがあります。

  • 最大電圧(VCEO,VDSなど) → 使用電圧がこの数値を超えると絶縁破壊されて壊れる
  • 最大電流(IC,ID) → 電流値がこの数値を超えると壊れたり効率が悪くなる
  • 最大損失(PC,PD) → トランジスタで消費される電力が発熱となりこの数値を超えると壊れる

電気的特性

 壊れはしませんが、性能を発揮できなくなる可能性がある特性で、重要なのは増幅率hFEやYfsなどの値で、この数値が小さいとトランジスタの目的が果たせません。ごくたまに増幅率を1倍で使う回路もありますが、基本的には50倍以上あります。

  • 最大使用周波数 → fT → 増幅率が1倍(増幅しない)周波数の上限 → 通常は増幅しないと意味ないので実質的にはfTの1/10以下の周波数でしか使い物にならない
  • 増幅率(hFEまたはYfe) → 増幅率 → 大きいほど増幅率は高いが、1000倍を超える場合は使い方に制限のあるダーリントン接続(2個のトランジスタで見せかけの増幅率を上げる)の場合が多いのと、あまり増幅率が大きいと温度変化や入出力特性の関係で歪(ひずみ:信号の波形が変化して音が悪くなったり計測誤差になったりすること)が発生します

トランジスタどうやって選ぶ?

 以上の性能を考慮して、必要なタイプ、使う電圧や電流、使う周波数、必要な増幅率を満たし、なおかつ入手しやすく、価格の安いものを選びますが、国内だけで数万種類あるので、多く使われるトランジスタは決まっています。

 大昔のインターネットがなかった時代は、トランジスタ規格表などの本で型番を調べ、店頭で探しましたが、現在ではインターネットでメーカーのサイトを見れば、PDFなどのデータシートが掲載されていますので、それを見て使えそうなのを選びます。

大昔のトランジスタ規格表(1985年)

トランジスタの資料の例

 ただし、Googleなどでトランジスタ型番を検索すると、その型番を売ってる通販サイトや、その型番の資料の概略だけを掲載しているデータシートサイトばかりが候補に出てきますので、実績のある国内の通販サイトで検索するのが適当です。ちなみにBingは更に酷いです。

 これらの通販サイトで売っているトランジスタ型番であれば、だいたいどこでも入手できます。また価格も目の飛び出るほど高価なものはないと思います。

 使えそうなトランジスタが見つかったら、通販サイトまたは店舗サイトなどで価格と在庫状況を調べます。その型番のトランジスタが手に入れば良いのですが、手に入らない、あるいは価格が高い場合は、似たようなトランジスタを調べ直します。

 大昔はトランジスタ互換表なる本が出版されていて、似たようなトランジスタを簡単に探せたのですが、現在は入手困難です。ただし、もし古本屋などで入手できたとしても新しいトランジスタは載っておらず、生産終了したトランジスタばかりなどというオチがありますので、お勧めしません。やはり刑事と同じで「足で稼ぐ」、いや、「指で稼ぐ」しかないでしょう。検索しては性能と価格を調べの繰り返しになります。

どうしても見たい場合は、独立行政法人国立特別支援教育総合研究所にあるみたいです。久里浜ですけど。独立行政法人国立特別支援教育総合研究所:最新トランジスタ互換表_半導体規格表シリーズ

トランジスタ互換表(1985年)

でも探す意味あるの?

 新しい書籍やホームページ記事を探せば、現時点で簡単に安価に入手できるトランジスタ型番が指定されているはずです。外国のサイトだとアメリカの型番である2Nxxxxや2Pxxxxなどの型番が指定されている場合もありますが、良く使われるトランジスタは国内の通販サイトや店舗でも売られている場合がありますので、通販サイトを良く探しましょう。

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