
スイッチは、電流をON/OFFするためのものと思いがちですが、それは間違っていません。しかし、スイッチの本来の意味は「切り替える」ということですので、ON/OFFだけでなく、3つ以上の切り替えがある場合もあります。
箱根登山鉄道などの山岳鉄道では、電車で登る坂道の勾配を減らすため、中腹に駅などを設け、分岐点「ポイント」で走る方向性を切り替えて運転する「スイッチ・バック」などの方式もあるように、回路を切り替えることを意味しています。
スイッチの選び方
スイッチを選ぶときは、まずスイッチの種類が先に決まることが多いです。そして、感電や漏電を防止するための「耐電圧」、金属接点の焼き付きや溶けてくっついてしまう溶着や発熱して火災になるのを防止するための「許容電流」、動作不良や発熱による火災を防止する「接触抵抗」、接触不良を防止する「最小切断電流」、などで選びます。
- 耐電圧
- ON/OFFできる最大電圧接点電流
- ON/OFFできる最大電流接触抵抗
- ONの時の接触抵抗最少電流
- スイッチとして機能する最小の電流寿命
押しボタン・スイッチ

押しボタン・スイッチは、人間が押して操作するスイッチです。押せば作動したり停止したりできるため、下に紹介するトグル・スイッチやスライド・スイッチやロータリー・スイッチのように、どちらがONでどちらがOFFとかを気にせずに操作できます。
下の写真の左上の「非常停止スイッチ」のように、緊急に機械を停止させたい場合などに、どちらがOFFか考えている余裕はありませんから、押しボタン・スイッチを使うのが一般的です。
また、押しボタン・スイッチは、思い切り押しても壊れることが少なく、たとえば小型のトグル・スイッチなどは、思い切り切り替えると、操作レバーやスイッチ裏の金属カシメが取れたりして壊れます。
私は、そんなに腕力はありませんが、小型のトグル・スイッチをいくつか壊しました。さすがに上の写真の茶色のスイッチのような大型のものは壊れたことはありませんが、いざ使おうと思った際に動かないということが少ないです。
非常停止スイッチなどは、急いでいるので押すというより、叩くという感じになりますが、壊れにくく作られています。また、非常停止スイッチは、押したら押したままになるので、危険を取り除いたあとは、引っ張るか矢印方向に回して復帰されないとならないので、間違って非常停止を解除してしまうことも少ないです。
特に知識のない一般人は、非常停止スイッチを解除する方法がわからない場合が多いので、管理者が安全を確認してから非常停止を解除する場合などに適しています。
モーメンタリー・スイッチ
モーメンタリーとは、「瞬間的」などの意味を持ち、押している間だけオン(またはオフ)になるタイプのスイッチです。電源スイッチなどに使うと、ずっと押していなければならないため、電源スイッチには通常は「オルタネイト形」を使いますが、エレベーターの呼び出しボタンなどは「モーメンタリー形」を使わないと、いつまでも呼び出しっぱなしになってしまいます。
オルタネイト・スイッチ


オルタネイトとは、「交互」という意味を持ち、1回押すとオンになり、再度押すとオフに戻るスイッチです。電源スイッチなどでは、ずっと押し続けないとならないのを避けるため、「オルタネイト形」のスイッチが使われます。
次に説明する「トグル・スイッチ」のように、どちらがオンで、どちらがオフか悩むこともなく、ボタンが引っ込んでいればオンの状態で、ボタンが飛び出していればオフの状態です。
どちらの状態でも、ボタンを押せば状態が反転するため、視覚障害のある方でも使いやすいスイッチです。
JR常磐線の北千住駅のように、2面3線、あるいは2面4線の線路があるプラットフォームでは、ラッシュ時に乗客の乗り降りに際して遅延を防止するために、先に到着した電車の乗り降りを扱っている間に、プラットフォームの対面する線路に次の電車が到着すると、先に到着していた電車を発車させることにより、乗客の乗り降りが遅れると次の電車が入線できない問題を解決し、乗客にとっても、乗り切れなかった場合に、次の電車が到着しているため、無理に乗ろうとせず、停車時間を確保したうえで、電車の遅延を防止するという画期的な取り扱いがされており、これを「オルタナティブ運用」と呼んだりしています。
トグル・スイッチ

トグル・スイッチは、操作レバーを摘まんで切り替えるタイプのスイッチで、内部にシーソーのような可動接点がある構造から、「シーソー・スイッチ」と呼ばれることもあります。

スイッチがどちら側に切り替わっているかを目で確認しやすく、運転モードの切替などに適しています。部品を代替品に切り替える際も「スイッチする」とか「トグルする」などと呼ぶように、「切り替えている感」のあるスイッチです。
スイッチによっては、中央でも止まるタイプ(センターOFF)もあり、機械操作で「自動/停止/手動」などと3点の切り替えに使えます。3点(3投)以上の切り替えが必要な場合は、2つ下の「ロータリー・スイッチ」が使われることが多いです。
シーソー・スイッチ

公園にある「シーソー」のように、片側が下がるともう一方が上がる構造のスイッチを「シーソースイッチ」と呼びますが、家の照明のスイッチとして一般的ですよね。
シーソースイッチは壊れにくく、操作部がプラスチック製のため、漏電による感電の危険も少なく、電源スイッチとしては一番多く使われるスイッチですが、取付穴に角穴を必要とするものが多く、電子工作に向いているとは言えません。
まれに取付穴が丸穴で済むシーソースイッチもありますので、どうしてもシーソースイッチを電源スイッチとして使いたい場合は、探してみると良いかも知れません。

マイクロ・スイッチ

マイクロ・スイッチは、人間が操作するのではなく、機械の内部などで物体の有無や接触を検知するセンサーとして使われます。

基本的に長寿命ですが、内部に金属接点があるため、接触不良や金属疲労による故障が発生します。
しかし、安価な「タクト・スイッチ」などと比較すると、圧倒的に長寿命なため、信頼性が必要な押しボタン・スイッチに使われたり、パソコンで使うマウスの内部に使われたりします。

余談ですが、エレ○ムなどの安いマウスは、すぐにボタンをクリックしても無視されて使えなくなりますが、安いマウスには、単価が数円のタクト・スイッチが使われていて、3年保証のマイクロソフトのマウスなどは、クリック・ボタンにマイクロ・スイッチが使われていました。
マウスでクリックできないとストレスが溜まるため、数か月~半年で壊れることの多いマウスをやめ、すべてマイクロソフトの3年保証のマウスにしたところ、5年で1つ壊れた程度の信頼性の高いスイッチです。
スライド・スイッチ

スライド・スイッチは、英語の意味の通り「滑らせて」操作するスイッチです。値段が安く、切り替えた側が見やすく、安い電子機器の電源スイッチとしても多く使われています。
トグル・スイッチのそうに袖や物がレバーに引っ掛かってスイッチが壊れたり、服の袖が破れることが少ないため、お財布と女性に優しいスイッチです。
また、金属接点を滑らせてONにするため、常に金属接点の表面が磨かれ、接触不良が起きにくいのも利点ですが、逆に金属接点が摩耗するため寿命は短めです。
次のロータリースイッチのように、ON/OFFだけでなく、途中で何段階か止まって複数の切り替えを実現できるものもあり、OFF/ON/音ありONなどのように使われる場合もありますが、行き過ぎてしまって途中で止めることが難しいので、高齢者や子供などにも優しい「ユニバーサル・デザイン」の観点からは、3投(切替ポイントが3つ)以上の切り替えにはお勧めしません。
ロータリー・スイッチ

ロータリー・スイッチは、英語の意味の通り「回転」させて切り替えるスイッチで、一般的なトグル・スイッチのように切替ポイントが2点(2投)のものも存在しますが、ふつうは3点以上の切り替えができるものが多いです。
どこの接点が何かがわからないため、ふつうはスイッチのところに銘板をつけて使いますので、銘板の製作期間や手間を考えると使いにくいのですが、切替ポイントが12点とかのものもあるので、とにかくたくさんの切替ポイントが欲しい場合に便利です。
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スイッチの取付穴
実は、スイッチの形状より大切なお知らせがあります。それは、「スイッチの取付穴」についてです。
スイッチの取付穴には、「丸穴」と「角穴」があり、これを選び間違えると非常に面倒なことになります。

丸穴
丸穴のスイッチとは、文字通り取付穴が「丸穴」のものです。操作面から見たスイッチの形が角型でも、取付穴は丸穴のものもありますので、注意が必要です。
丸穴をケースなどのパネルに加工する際は、小さな穴ならば「ドリル」、中くらいの穴ならば「シャーシー・パンチ」、大きい穴ならば「ホールソー」を使って加工しますが、これらの工具は、どれも穴加工が比較的簡単です。


大きな穴を加工するには、ドリルやボール盤などの加工機械も大きなものが必要になり、少し怖いですが、手間はそれほどかかりません。
角穴
ドリル、ニッパー、ヤスリで角穴を加工
角穴の加工は面倒で、きれいに加工するのは困難です。電子工作などで角穴をあけるには、ドリルで角穴の内側に次々と穴をあけ、間をニッパーで切ってヤスリで削って仕上げるのが一番必要な工具が少なくて済みますが、ものすごく手間がかかり、美しく仕上げるのが難しいです。
ドリル、ハンドニブラーで角穴を加工


ハンドニブラーと呼ばれる板金を刃先で食いちぎる工具を使えば、ドリルで穴をあけまくった穴の間をニッパーで切り、ヤスリで仕上げるよりは、はるかに楽です。
しかし、ハンドニブラーで食いちぎるときに、その周囲に傷をつけますので、美しくは仕上がりません。また、直線や直角を出すのがほぼ不可能で、穴が微妙に台形になったりします。
また、ハンドニブラーで一度に食いちぎることができるのはせいぜい数ミリのため、大きな角穴を加工するには数百回もハンドニブラーを力強く握らなければならず、まるで「握力の持久力チェック」のように加工後は手が腱鞘炎になりかけます。

フライス盤で角穴を加工

数万円~数十万円を払って「フライス盤」を購入すれば、美しい角穴を簡単に素早く安全に加工できますが、「エンドミル」と呼ばれる端面と側面の両方を削れるドリルのようなもので削る関係上、どうしても角がエンドミルの直径のRが残ります。ここをヤスリで削って直角に仕上げることも理論的には可能ですが、よっぽどのマイスターでもない限り、結局削りすぎて直角を超えてしまったり、ガタガタになるのがオチです。

そのため、表示などで角にRがあるほうが良い場合以外、特にスイッチの角穴には向いていません。なので角穴を必要とするスイッチは出来るだけ使わないのが吉です。
数百万円~数千万円出して「YAGレーザー加工機」を購入すれば、直角の角穴を素早くあけられますが、YAGレーザーは目に見えないばかりか、金属をも溶かして一瞬で穴をあけたり、金属を切断できるので、非常に危険です。そのため使用するには資格が必要になったりしますので、普通は加工できる会社に依頼します。
CNCフライス盤で角穴を加工

CADで図面を描き、そのデータをGコードと呼ばれる加工データに変換し、Gコードを解釈して自動的に加工できるのがCNCルーターと呼ばれる加工機械で、それを使えば正確に何度でも自動で加工ができますが、エンドミルを利用するため、基本的に角穴の角にはRが付きます。
ですので、何度も言うようですが、角穴を必要とするスイッチなどのパネル部品は出来るだけ避けるのが良いでしょう。
見た目は角型のスイッチでも、取付穴は丸穴のスイッチも売られていますので、そうしたスイッチを使えばパネル加工は楽になります。
ただし、丸穴ですと、取り付ける際のネジ締めでスイッチ自体が回ってしまい、見た目が非常に良くないです。
そこで、丸穴のパネル部品には、向きが変わらないように、キーやキー溝がある場合が少なくありません。出っ張ったキーであれば、丸穴加工をした後でヤスリで削れば何とかなりますが、キー溝の場合は丸穴の一部を残さないといけませんので、基本的に回転するドリルやホールソーなどでは加工することが不可能です。
エンドミルであれば、丸穴の一部を残して、外側になら直角を作れますので、加工することは可能ですが、手動だとちょっとしたミスですぐにキーがなくなりますので、実質にはCNCルーターが必要になるでしょう。
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