ユニバーサル基板を使って電子基板を自作する方法を、その失敗例を挙げながら専門学校講師が解説します。
ユニバーサル基板の部品配置

コネクタは基板の端に
ユニバーサル基板を使って電子回路基板を製作する場合、まずは部品配置を決めます。特に入出力がある場合に、コネクタを基板の中ほどに付けてしまうと、抜き差しが出来なくなったり、難しくなったりします。
たとえば、上の写真の例の場合、USBコネクタが基板の端にないと、ケースに入れた際にケーブルを差し込めなくなり、いちいちケースから外さないとならなくなります。
また、右側にあるmicroSDカードのソケットが基板の端にないと、microSDカードの差し替えが出来なくなったりします。

電圧・電流・周波数が極端に違う部品は離す
そのほかにも、高電圧回路と低電圧回路を離さないと放電して事故につながったり、動作が不安定になったり、高周波回路と低周波回路を離さないと誤動作の原因になったり、微弱信号と高出力信号を離さないとノイズやハウリングなどの誤動作につながったりします。特にハウリングは耳を傷めたり、スピーカーを破壊したりする可能性があり、注意が必要ですが、通常の電子回路では、そこまで気にする必要はないかも知れません。
他人が作った5ボルトにつなくべき配線を12ボルトにつないである基板をパソコンにつないだ結果、パソコン2台が電源が入らなくなり、壊したことがあります。

配線ができるだけ交差しないように
配線が交差すると、見た目が悪いだけでなく、作業がしにくくなり、ジャンパー線の使用量が増え、断線して故障しやすくなったり、誤動作しやすくなったりしますので、できるだけ配線が交差しないように、なおかつ配線が短くなるように部品配置をします。
ただし、配線が短くなっても、あまり部品の向きがバラバラだと、見た目が悪いばかりでなく、ICソケットにICを差し込むときに向きを間違えて部品を燃やしたり、壊れたりする原因にもなりますので、できるだけ向きは揃えたほうが良いです。


ユニバーサル基板の部品固定
高さの低い部品(背の低い部品)から固定する
ユニバーサル基板に電子部品を固定する際には、高さの低い部品から付けないと、基板を裏返して半田づけする際に、部品が落ちて作業が面倒になります。
一般的に高さの低い部品は、抵抗やダイオードですが、ICを使った回路の場合は、ICを先に付けないと、その後の配線がままならず、部品配置も決まりません。
ただし、IC、トランジスタ、ダイオードなどの半導体は熱に弱く、ハンダ付けの際の熱によって壊れる可能性もありますし、とくにICは熱だけでなく静電気に弱いので、最後に付けるために、まずICソケットを固定します。

ピン数の多い部品は両端または対角の2本だけ仮にハンダ付けする
ピン数の多い部品のピンを先に全部ハンダ付けしてしまうと、付ける場所や向きに間違いがあったり、浮いてしまったりした場合に、修正することが非常に困難です。
そのため、ICソケットやコネクタなどのピン数の多い部品や、LEDやトランジスタなどの傾きやすい部品は、できるだけ少ないピンだけを仮にハンダ付けして固定します。

仮にハンダ付けする理由は、全部しっかり付けてしまうと、間違いがあった場合や浮いてしまった場合に取ったり修正したりしにくいばかりでなく、このあと抵抗やコンデンサなどの部品のリード線で直接配線するときに、浮き上がって見た目が悪いだけでなく、はんだ付け不良により動作不良になったり、最悪の場合、CMOS ICの入力ピンがオープンになって、静電気などにより大電流が流れ続ける「ラッチアップ現象」を起こしてICが燃えたりしますので、できるだけ抵抗やコンデンサなどの部品のリード線を基板に密着させ、確実にランド(銅箔)の上に乗るようにするためです。
ユニバーサル基板の抵抗・コンデンサ・ダイオードなどの取付
高さの低い部品から付ける(熱や静電気に弱い部品は最後に)
高さの低い部品の代表例は、抵抗や積層セラミックコンデンサなどですので、高さの低い部品から順に付けてゆきます。

銅箔を介してショートしないようにリード線を曲げるときは直角に!

ICに積層セラミックコンデンサなどのバイパス・コンデンサ(大電流が流れた際に電流をバイパスして電圧が下がるのを防ぐ)は、可能な限りICの電源ピンの近くに最短距離で付ける必要があります。遠くに付けると急に電流が増えた際に電流供給が間に合わず、電圧が下がって誤作動の原因になります。
バイパス道路が遠回りで細くて曲がりくねっていたら渋滞を引き起こしてバイパス道路の意味がありませんよね?バイパス・コンデンサもそれと同じで、できるだけ短く直線的に、できるだけ太く交差点も大電流が流れても電圧降下(速度低下)しないように確実に、できるだけ大電流が流れる(交通量が多い)ところの近くに付けなくては意味がありません。
リード線を直角に曲げられないときは45°で隣の銅箔に接触しないように!

傾きやすい部品は片方だけをハンダ付けして修正してから残りをハンダ付け


すずメッキ線でグラウンド(GND)と電源を交差しないように配線する
とくにグラウンド(GND)が重要
電子回路で一番大切なのはグラウンド(GND)と電源の配線です。とくにグラウンドは「アース」とも呼ばれ、地面(地球)のようなもので、グラウンドが不安定だと、ちょっとした地震(電流スパイク)で電圧が不安定になったり、接地が浮いて下手をすると回路が燃えたりします。

よく、電流を水流に置き換えて説明したりしますが、グラウンド(下水道)が詰まったりすると、流し台やトイレから下水が溢れて大変なことになったりします。
そこまでならないまでも、下水管が細くて曲がりくねっていたりすると、下水の流れが悪く、お風呂の排水に時間がかかったり、浴室の床が水浸しになったりしますよね?
電子回路の場合は、動作が不安定になったり、配線が発熱して火災の原因になったりしますので、できるだけ太い電線で配線する必要があります。
また、グラウンドと電源は、電子回路のあちこちに接続する必要がありますので、すずメッキ線などの裸線を使うと便利です。

すずメッキ線は、あまり太いと、ハンダ付けが難しくなり、値段も高いうえに、曲げにくいため、グラウンドの配線は、直径が0.8mm以下のすずメッキ線を使うと便利です。
電流が少なければ、もっと細いすずメッキ線でも大丈夫ですが、電源の配線と見分けが付くように、少し太めのすずメッキ線を使ったほうが便利です。
私は、たいていの場合、直径が0.6mmのすずメッキ線をグラウンドに、直径が0.5mmのすずメッキ線を電源に使うことが多いです。
まずはグラウンド(GND)を最優先に配線する

グラウンド(GND)の配線は、太めのすずメッキ線を使います。すずメッキ線は、ランド(銅箔)の中央を通し、曲げるときはできるだけ直角に曲げて、曲げた場所がブラブラしないようにハンダ付けして固定します。
すずメッキ線は熱が伝わりにくく、電気の通らないテンプラになりやすいので、とくに接続部分は十分に加熱してから糸はんだをタップリ流し込みます。
私も接続点のハンダ付け不良が原因で、そこから先の部分が動かないことが何度もありました。すずメッキ線をハンダ付けする際に、指で押さえると熱いので、放熱クリップまたは逆作用ピンセットを使うと便利です。


電源を次に優先的に配線する

ユニバーサル基板のジャンパー配線
ジャンパー線の配線は単線でする
基板内の配線は、基本的に複数の細い線がより合わさった「撚り線」でなく、芯線が1本だけのラッピング線(商品名:ジュンフロン線)などの「単線」を使います。

単線は、芯線が1本だけなので、何度も折り曲げると金属疲労により芯線が断線しやすいですが、いくらか太めの単線で配線すれば、しっかりと固定されて見た目も綺麗ですし、配線の確認も容易ですし、電流も確実に流れます。
高周波回路では、単線は表皮効果により芯線の表面にしか電流が通らないため、極細の銅線を撚り合わせた「リッツ線」などの線を使う場合もありますが、基本的には基板の配線は単線で行います。
ユニバーサル基板の配線に使う電線の太さ
単線は芯線の直径またはAWGナンバーと呼ばれるアメリカの電線の規格番号で選びます。直径0.26mm(AWG30)ですと、やや頼りないので、0.3mm(AWG28)程度が使いやすいと思います。ただし、電源や電力線には、流す電流に耐えられる太さの電線が必要です。2アンペア程度であれば、0.4mm(AWG26)、3アンペア程度であれば0.5mm(AWG24)の電線を使うと良いでしょう。
被覆線の被覆(ビニール)をむくには、芯線の太さに対応した「ワイヤーストリッパー」を使わないと、芯線に傷が付き、断線して故障の原因になりますので、初期投資が必要ですが、ワイヤーストリッパーをぜひ購入してください。

電線の被覆を先端2mmくらい(銅箔の直径)むいてはんだ付け配線する

電圧が高めの電源の配線や、電流が大きいアンプなどの配線では、太め(AWG20~24程度)の耐熱ビニール単線を使うと良いでしょう。

良くないユニバーサル基板の配線例

これでも私がいくらか修正した回路基板の例です。はんだ付けの加熱不足で、はんだを溶かしてこすりつけているため、まともに電気が通りません。



良いユニバーサル基板の配線例
下の写真では、太めのすずメッキ線と細めのジュンフロン線で短めに配線されています。見た目もスッキリして、はんだ付けも良好ですが、私も老眼の進行により、だいぶ細かい作業がつらくなってきました。

下の写真は私の教え子の配線で、全体的に配線が細めなのが少し気になりますが、配線そのものは非常に綺麗で、もはや私を超えています。
私を超えるのは少し悔しい面もありますが、教え子が私の指導をきちんと受け止めて、私以上になってくれるのは嬉しい限りです。
