ユニバーサル基板(汎用基板)を使って回路を製作する手順について写真を使って解説します。
高さの低い部品から取り付ける
高さの高い部品を先に着けてしまうと、裏返してハンダ付けする際に、高さの低い部品が抜け落ちてしまいます。作業効率を上げるためにも、基本的には高さの低い部品から付けます。
ただし、集積回路(IC)を使った回路などでは、すべての部品をICにハンダ付けすることになりますから、先にICソケットを付けないと、作業が困難ですので、ICソケットを先に付けます。ユニバーサル基板でなく、プリント基板(プリント配線板)の場合は、単純に高さの低い(背の低い)部品から付けたほうが良いでしょう。
ピン数の多い部品は対角または両端のピンを先にハンダ付けする
ピン数の多いIC、ICソケット、IDCコネクタなどの部品は、傾いて付きやすく、全部のピンを先にハンダ付けしてしまうと、修正が極めて困難になります。
そこで、対角または両端の2本のピンだけを先に付け、傾きや向きの間違いがないかどうかを確認してから残りのピンをハンダ付けします。
また、IC、ICソケットなどは、完全にハンダ付けしてしまうと、あとから抵抗やコンデンサなどのリード線のある部品をハンダ付けするときに、リード線(部品の足)が浮き上がってしまい、見た目が悪いだけでなく、ハンダ付け不良の原因になりますので、固定される程度に少しだけ付けます。
寝かせて付ける抵抗をハンダ付け
一般的に高さの低い部品の筆頭なのは寝かせて(水平に)付ける抵抗ですので、抵抗を基本的に先にはんだ付けします。
ユニバーサル基板を使って配線する場合は、部品の足で配線すると、作業も簡単で、見た目も良く、はんだ付け不良の可能性も減りますので、はんだ付けする時点で部品の足は切らないでください。
部品の足を基板に密着するように直角または45°に曲げる
部品の足を曲げる際は、基板に密着させ、リード線で配線する時には、直角または45°に曲げます。その理由は、中途半端な角度に曲げると、ユニバーサル基板の銅箔を介して隣の配線とショートする可能性が高くなるからです。
接続する部品の足の直前でリード線を切る
部品のリード線で配線する際は、接続する部品の足の直前(ユニバーサル基板の穴の直前)で切ってからハンダ付けします。
そうしないと、リード線が浮き上がって見た目が悪いだけでなく、あとで基板を置いたときなどに、リード線が潰されて曲がり、隣の配線とショートする可能性があります。
接続する先のピンとリード線とユニバーサル基板の銅箔を同時に加熱してハンダ付け
ハンダ付けする際は、付けたい全部の金属を同じ温度に加熱しないと、うまくハンダが流れず電気が通らなかったり、取れてしまい故障の原因になります。
ハンダ付け ハンダ流し
ハンダ付けなのに、ハンダ流しとは、矛盾がありますが、溶けたハンダを部品の足に付けようとすると、見た目が悪いだけでなく、電気が通らないことが多く、「ハンダ付け配線」の目的を達成できません。
特に溶接の経験があるかたは、溶けたハンダをこすりつける傾向があるので、ハンダごてはハンダを付けるための道具ではなく、ハンダを付ける場所をハンダが溶ける温度まで加熱して、ハンダを流しやすくする道具だと思ってください。
加熱したら糸ハンダを溶かし込む
糸ハンダは、電子回路用のSn60%以上(スズの割合が60%以上)のものを使ってください。値段の安い糸ハンダはスズの割合が50%のものが多く、溶ける温度(融点)が高いため、電子回路のハンダ付けには不向きです。
なぜなら、電子部品は熱に弱く(270℃以下で3秒または7秒以内のハンダ付け推奨)、融点の高いSn60%未満の糸ハンダでは、ハンダ付け時間が長くなり、電子部品が熱で壊れたり、性能が落ちたりするからです。
ちなみに、Sn50%の糸ハンダは、ブリキ板やトタン板などの金属板のハンダ付けに使うためのもので、スズの割合が少ないと融点が高く、取れにくいのと、硬くて金属疲労によるハンダ付け箇所の分離が起こりにくいためです。
電子部品のハンダ付けは、固定と電気を通すのが目的なので、スズの割合が多いと、スズは鉛より電気を通しやすく、低い温度で溶けて付けやすく、電子部品を劣化させにくく、錆びにくいためです。
部品の足、部品のリード線、ユニバーサル基板の銅箔の3点を同時に同じ温度まで加熱したら、そこに糸ハンダを押し当てて溶かし込みます。
1kΩ0.25Wの抵抗を付ける
小型の抵抗は、数字を印刷すると読みにくいため、カラーコードと呼ばれる色の帯を印刷して識別します。
抵抗を付ける際には、あらかじめリード線をユニバーサル基板の穴の間隔に曲げておくと見た目も良く、作業効率も高まります。
あらかじめ抵抗の足を曲げておく
あらかじめ抵抗の足をユニバーサル基板の穴の間隔に曲げておきます。一般的なユニバーサル基板の穴の間隔(穴ピッチ)は1/10インチつまり約2.54mmになりますので、一般的な0.25ワットの抵抗器だと、2.54×4=10.16mmに曲げます。
ラジオペンチを使って曲げることもできますが、間隔を合わせるのが難しく、これから電子工作を積極的にする予定の人は、それほど高価な工具でもないので、「リードベンダー」を購入しておくと良いでしょう。
この場合は×4(10mm)の溝に抵抗器を置き、両側のリード線を下に押し込んで直角に曲げます。また、配線の都合により、違った間隔で曲げると、ユニバーサル基板裏の配線を跨いで、交差せずに配線できたりします。
次の部品をハンダ付けするためにリード線を曲げておく
抵抗の足を差し込んで基板に密着させてLED接続のために曲げて穴の直前で切っておきます。抵抗の足を曲げて配線すると、あとで付けるLEDの極性を間違えたときや、交換したいときに楽になります。
次に背の低い部品(積層セラミックコンデンサ)を付ける
積層セラミックコンデンサを差し込んで足を曲げる
積層セラミックコンデンサには電気的な極性は無いので、あとから確認しやすいように印字面を見えやすい向き(この場合はICソケットと反対側)に差し込んで足を曲げてICソケットのピンの直前で切ってハンダ付けします。
足は直角に曲げても良いのですが、着けにくいため、ここでは横着をして45°に曲げてICソケットの足の直前で切って片方だけ先にハンダ付けします。
片方だけ先にハンダ付けする理由は、片方をハンダ付けすると、もう片方のリード線を曲げやすく、位置の調整や傾きの修正が容易になるためです。
片方のリード線を仮にハンダ付けして固定したら、もう片方のリード線をハンダ付けし、先に仮止めしたリード線のハンダ付けが不十分なようなら、ハンダ付けしなおします。
立てて付ける抵抗をハンダ付け
つぎに立てて付ける抵抗をハンダ付けします。立てて付けると、基板を裏返した時に、部品が折れ曲がりやすく、故障の原因になりますので、スペースに余裕があるときは、できるだけ避けるのが望ましいですが、ここでは、あえて練習のため立ててハンダ付けします。
この回路を実用にしたい場合は、この手順を無視して、寝かせて付けることをお勧めします。寝かせて付ければ、壊れにくく、部品の確認や交換も容易で、見た目も良くなります。
立てて付けると、部品のリード線が露出して、隣のリード線とショートしたり、他の金属部分(たとえばマイナスアースされているシャーシーなど)に触れて発火や故障の原因になりますので、特にアースとショートすると困る片方を短く基板に密着させます。
この回路の場合は、ICソケットの3番ピン(ICソケットの溝の下から反時計回りに数えます)がタイマーICの出力ピンですので、ここをアースとショートさせるとICが壊れます。
そのため、ICソケットの3番ピン側のリード線を基板に密着させてハンダ付けしておくと、仮に露出部分がアースとショートしても壊れなくなります。
こういった考え方を故障しても安全なことから「フェールセーフ」または、間違えてショートさせても壊れないことが「フールプルーフ」(バカよけ)と呼び、安全な設計の基本的な考え方になります。
次に背の低い部品(LED)をハンダ付けする
LEDには極性があります
発光ダイオード(LED)には電気的な極性があります。一般的には足の長いほうがプラス(アノード)になりますので、足の長いほうを回路のプラス側にハンダ付けします。
LEDの足の長いほうを右側にして基板に差し込む
裏返して抵抗の足をLEDの足の長いほうの直前で切ってハンダ付け
LEDの足の短いほうを曲げて立てて付けた抵抗の足にハンダ付け
LEDの傾きを修正してから短いほうを曲げて切ってハンダ付け
部品の足の片方をハンダ付けした時点なら、まだ部品の傾きを簡単に修正できます。両側の足をハンダ付けしてから修正しようとすると、銅箔が剥がれて見た目が悪くなるだけでなく、信頼性も低下して故障の原因になります。
電解コンデンサをハンダ付けする
電解コンデンサにも電気的な極性があります。LEDと同じく足の長いほうがプラスですが、リード線を切ってしまうとどちらが長いのかわからなくなりますので、電解コンデンサの側面に(-)のマークが印刷されています。
まれに外国製の電解コンデンサなどでプラス(+)側に印刷があるものもあるので、十分に注意して差し込みます。
電解コンデンサの足の長いほうをICソケットの2番ピン側に差し込む
基板を裏返して電解コンデンサの足を接続先の直前で切る
電解コンデンサも傾きを修正できるように片方ずつ足を切って曲げてハンダ付けします。付けたら極性を再確認します。