電力は、動力、熱、光など、別のエネルギーに簡単に変換できます。使う際には二酸化炭素を発生しない、安全性が高いなど、数多くの利点がありますが、逆に発電や送電設備にお金がかかるとか、停電すると何も使えなくなるなどの欠点も多くあります。
とは言え、電気を使った電灯は、オイルランプのように火災になることは少ないですし、電気を使った動力はエンジンや蒸気機関車などのように二酸化炭素や排気ガスも使う時点では発生しませんし、電気を使ったエアコンなどの冷暖房は、石油ストーブなどのように火災を起こす可能性は極めて低いです。ただし、電熱線を使った電気ストーブや電気コンロ、灯油を燃やす石油ファンヒーターなどは使い方を間違えると火災の危険が高まるので注意が必要です。
電気が持つエネルギー
ワット[W]
電気が持つ瞬間的なパワーがワット[W]です。ワットが大きければ明るく光ったり、掃除機の吸引力が強くなったり、電車や電気自動車の加速が良くなったり、短時間で部屋を冷暖房したりできます。
1ワット=1ボルト×1アンペア
ジュール[J]
電気が1秒間あたり生み出すエネルギーがジュール[J]ですが、電気料金を計算するためには単位が小さすぎるので、普通は次に示すキロワット時[kWh]が使われます。
キロワット時[kWh]
1キロワット=1000ワットの電力を1時間使うと1キロワット時です。たとえば100ボルトで10アンペアの電気=1キロワットの電気ストーブを1時間使うと1キロワット時です。
電気料金は基本料金+従量料金で計算されます。基本料金とは、使っても使わなくても毎月払わなくてはいけない料金で電力会社や契約(契約種別や契約アンペア)により違います。
従量料金とは、使った分の電力に対する料金で、使わなければかかりません。従量料金の単価は契約により違いますが、電気は使えば使うほど単価が高くなります。
電気をたくさん使う人が増えると、発電所、送電線、変電所、配電設備(電柱と電線と変圧器)なども増設しないといけなくなりますし、それらの設備は停電しないように一番多く使われるときに対応するように維持管理しないといけません。
電気は多く使うほど単価が高くなる!
最近は電力料金値上げの影響で、一般家庭でも単価の上限の3段目料金だと40円近い従量料金がかかります。つまり、1000ワットの電気ストーブを1時間使うと40円、10時間使うと400円、それを30日使うとそれだけで1万2千円と、とんでもない料金になります。それを4部屋で使うと…もう計算したくないです。
エアコンは電気ストーブよりお金がかからない!
エアコンの場合は、電力をそのまま熱に変換するわけではなく、電力でモーターを回し、外の熱を集めて室内に熱交換器から送風ファンで温風を送るため、使った電力の3~5倍ほどの熱量を得ることができます。古いエアコンはこの熱効率が低く、電気代が余計にかかります。
ただし、エアコンは外の熱を集めて室内に送るため、外気温の低い寒冷地ではあまり暖房能力がなく、外気温が0℃を下回ると、室外機の熱交換器が凍結してしまうため、霜取り運転(電気を使って部屋の熱で室外機の熱交換器を温める)をする必要があり、ほとんど暖かくならないばかりか、室外の熱で室内を温め、霜取り運転では逆に室内の熱で室外機を温めるため、電気を使うだけで暖房として機能しません。
そのため、寒冷地ではエアコンでなく、大きな灯油タンクを屋外に設置して、石油ファンヒーターなどで暖房するのです。
エアコンは寒冷地では役に立たない!
それに対してガス料金は、たくさん使う人が増えると大量一括購入により単価が下がりますし、ガスは貯めておくことができるため、一番多く使われるときのことを考える必要はなく、タンクの残りが少なくなったら輸入すれば済みます。
電力を光に変換
電気を光に変換する照明器具は、昔は電球や蛍光灯などの放電管が使われましたが、現在では発光ダイオード(LED)を使うのが一般的です。
発光ダイオード(LED)は電気を光に変換する効率が非常に高く、70%~80%程度が光のエネルギーに変換されます。
電球だと10%程度、蛍光灯だと40%程度で、残りのエネルギーは熱に変換されてしまいます。なので点灯している電球に触れるとやけどしますし、電球が衣類や紙などの燃えやすいものに触れると火災になったりします。
LED電球も当初は触れないほど熱いものもありましたが、近年はほんのり温かく感じる程度で、電力効率も良いですし、火災の原因になる心配もほとんどありません。
電力を動力に変換
電力を動力(運動エネルギー)に変換するには、一般的に「モーター」が使われます。モーターの動力を車輪に伝えれば電車や電気自動車などの乗り物に、機械に使えば電動クレーンやエレベーターやエスカレーターなどに、ポンプを回せば噴水や掃除機などに、ヒートポンプを回せばエアコンなどの冷暖房に使うことができます。
電力を熱に変換
電気のエネルギーを直接熱に変換するのが「ヒーター」あるいは「電熱線」です。1ジュールの電力を熱に変換すると0.24カロリーの熱が発生します。つまり、1cc(1ml)の水を0.24℃加熱することができます。
つまり、ペヤングソース焼きそばを作るために必要な沸騰した500ミリリットルのお湯を作るためには、(100℃-20℃)×500÷0.24=160,666[J]のエネルギーが必要で、これを3600秒と1000で割ると、約0.05キロワット時の電力が必要になります。電気代に換算すると約2円ですかね。間違っていたら指摘してください。
逆に計算すると、1000Wの電気ポットで約167秒の時間が必要になります。もちろん熱効率が100%ではないので、実際にはこれより電気代も時間もかかるはずです。
ただし、電球などと違って電熱線の場合は効率よく熱に変換されるので、あとは熱が逃げるかとか熱伝導率の問題になります。ただし電熱線が光って見える場合は一部が可視光になっていますし、光って見えなくても赤外線を放射していますので、赤外線に物を温める能力があるとしても、効率は100%ではありません。
この発生した熱で水を加熱すれぱ電気ポット、電気温水器になりますし、鉄板や鍋を加熱すればホットプレートや電気鍋になります。
ヒーターでなくコイルで渦電流を発生させれば電磁調理器(IHヒーター)になります。電磁調理器の場合は人体が触れても熱が発生しませんので、鍋やフライパンを触れば別ですが、やけどの心配は減ります。逆に熱いかどうかわからないため、赤い照明を光らせたりして効率が悪いですし、停電するとお湯も沸かせませんし、料理もできません。