プリント基板やユニバーサル基板から外に電線を引き出すときは、コネクターを使うのが常識です。そのコネクターは、ハウジングと呼ばれるケースと、電線に付けて実際に電気を通すためのコンタクト・ピンと呼ばれる金属製の部品で構成されます。

 コネクターのコンタクト・ピンを付けるには、「圧着ペンチ」と呼ばれる工具を使いますが、これが結構むずかしいのです。

 コンタクト・ピンを付ける方法である「圧着」をする前に、まず失敗例から見てみましょう。私は、あまり失敗できないのですが、教え子が大量に失敗してくれるおかげで、失敗例は山ほどありますが、その中の代表的な例を見てみましょう。

コンタクト・ピン失敗例

コンタクト・ピンの圧着に失敗した例

 上(黄色の電線)の例では、コンタクト・ピンの先端部が変形してハウジングに入らないばかりか、右側の金属製の爪が互い違いになっていて、電線のビニールをしっかりと固定できておらず、断線の可能性が高くなります。

 中(赤の電線)の例では、圧着工具の使い方が不適切であったためにコンタクトピンが「く」の字に曲がってしまい、さらには圧着ペンチの溝を間違えた上に強すぎてコンタクトピンに「くぼみ」と「出っ張り」が出来てしまっていて、もちろんハウジングに入りません。

 下(黒の電線)の例では、上の2つよりはましに見えますが、電線の芯線(銅線の部分)がコンタクトの中にまで入っていて、ハウジングには入るでしょうが、コネクターにささりません。しかも、電線のビニールが圧着部分に食い込んでいて、電気がきちんと通るか心配です。

本当ははんだ付けしてはいけない!

コンタクト失敗例

 上の写真はややピンボケでもうしわけないのですが、コンタクト・ピンの中央部をはんだ付けしたのは良いのですが、電線の芯線が本来ビニールを固定する爪の外側にまで出てしまっていて、このままだと数回電線を触って動かすと断線します。そして、実際に断線して電線が取れてしまった状態が写真の下側になります。このコンタクト・ピンには、本来は黒の電線がはんだ付けされていました。

 圧着した電線が抜けないようにはんだ付け(本来は良くないですが)したのは良いアイデアでしたが、ビニールを固定する部分をきちんと使わず、しかもはんだがコンタクト・ピンの中にまで入ってしまうと、絶対にコネクタにささらないばかりか、コネクターのピンまで折ってしまい、基板ごと交換するしかなくなったりしますので注意が必要です。

コンタクト・ピン圧着の正しい例

コンタクト・ピン圧着の正しい例

 またまたピンボケでもうしわけないのですが、こちらが実際に私が圧着したコンタクト・ピン圧着の正しい例です。コンタクト・ピン中央部の芯線を圧着する部分は正しく芯線(銅線)を包み込み、抜けにくいようにと電気がじゅうぶんに通るように「金属部分から少しだけはみ出すように」圧着され、さらにコネクターの電線を引っ張って抜く人がいても電線が抜けないように(本来は電線を引っ張ってはいけないのですが)芯線圧着部分にはんだ付けし(本来は専用工具を使えばはんだ付けの必要もなくトラブルの元になるのでプロはやってはいけません)、そしてビニールを固定する爪も断線しないようにきっちりビニールを優しく包み込み、芯線の不必要な露出もありません。

圧着ペンチの使い方

圧着工具の例(1)
圧着工具の例(2)

 上の2つの写真のような圧着工具を使います。これらの写真だと見づらいので、圧着部分を拡大した下の写真を見てください。

圧着ペンチの圧着部分

 上の数字はコンタクト・ピンの幅をミリメートルで表したもので、適合するサイズの溝を使います。見てわかるとおり段階的にしか溝がありませんので、コンタクト・ピンによってはサイズが合わず、うまく圧着できないものもあります。メーカー純正の圧着工具では、もちろんピッタリ合うばかりでなく、芯線とビニールの両方を同時に確実に圧着できますが、お値段が数万円以上するために、使うコネクターの工具を全部そろえようとすると、とんでもない金額になります。

正しいコンタクト・ピンの圧着方法

 さて、圧着ペンチの圧着する溝の上側はハートになっていて、下側はU字型になっています。このU字にコンタクト・ピンを正しく乗せ、電線を正しくむいて重ね、コンタクト・ピンや電線がずれないように正しい強さで圧着ペンチを握れば圧着完了です。

 そして、電線のビニールも正しく圧着すれば良いのですが、言葉で説明するのは難しいので、そのうち動画でアップするつもりです。

コンタクト・ピン圧着の動画はこちら

コンタクト・ピン圧着の詳しい説明はこちら

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