電子機器が動かないとき

高見 豊のFacebookページ
この記事が気に入ったら
いいね!しよう
最新情報をお届けします。
試作回路基板各種 電子部品
試作回路基板各種

電源は正常ですか?

 電子機器は電源がないと動きません。電圧が足りないと動作が不安定になり、電圧が高いと故障の原因になったり発煙や発火することもあります。

 まずは最低限、テスターを使って電源電圧を測定しましょう。断線などで電源が来ていないことがあまりにも多いのです。

テスターで電圧をチェック
テスターで電圧をチェック

 電子機器は基本的に直流電源を必要とします。乾電池やバッテリーであれば問題ないのですが、コンセントからAC電源を取って直流に変換して使う場合、電源周波数で電圧が上下するリップルが発生します。

 電源にリップルがあるかどうかを調べるのはテスターでは不可能です。テスターは基本的に平均値を示しますので、リップルがあっても平均されてしまい、異常があることがわからないのです。

 そこで、リップルを見るためには、電圧波形を見ることが可能なオシロスコープが必要です。オシロスコープは以前は数十万円以上する高価なものでしたが、現在では数万円のものもあります。

オシロスコープでリップルを見る
オシロスコープでリップルを見る

 電圧変動がマイコンの場合は±5%以内であれば良好ですが、±10%程度でも動く場合がほとんどです。さすがに±20%を超える変動がある場合、時々あるいは全然動かないこともあります。

 以前のトランス式の電源の場合はリップルが多かったのですが、近年のスイッチング電源の場合は、リップルは少なく、逆に高周波のスイッチング・ノイズが多かったり、ある一定以上の電流を流さないと、既定の電圧が出力されないものもあります。

スイッチング電源の例
スイッチング電源の例

過電圧によりICが破壊されていませんか?

 集積回路(IC)は過電圧に非常に弱く、電源のスパイク電圧や静電気などで一瞬にして壊れてしまいます。特に現在主流のCMOS構造のICは、静電気の逃げ道のないフローティング・ゲートという構造を持っていて、静電気が加わると内部の保護ダイオードで吸収されるか、吸収しきれなかった分はフローティング・ゲートを破壊して、その後、電源電源がショート状態で燃え尽きるまで永久に流れるラッチアップという現象を引き起こします。

ラッチアップにより破壊されたIC
過電圧により破壊されたIC
サージにより破裂したIC
サージにより破裂したIC

 このように見た目でわかる場合はまだ良いのですが、見た目には変化がなく壊れている場合もありますので、普段から簡単に交換できるように開発段階では必ずICソケットを予め付けておきましょう。

ICソケットを使った試作回路基板
ICソケットを使った試作回路基板

設計ミス?

 最後に疑うのは設計ミスです。特にWeb上には間違った情報が多くあり、それを鵜呑みにしてしまうといつまで経っても問題は解決しません。ICなどの部品の資料は必ずメーカーのサイドで確認しましょう。

データシートの検索はGoogleで!

 特にブラウザの検索エンジンがマイクロソフトのBingになっている方は要注意です。Bingは先頭に大量の広告主あるいはマイクロソフトが表示したいサイトを表示します。本当に探しているページが3~5ページ目にやっと出てくる場合が多いです。

 しかも、Windows大型更新の度に設定を「推奨の設定を使う」というボタンが目立つように標準で選択されていて、そのまま進むと検索エンジンが強制的にBingに戻されます。

 お疑いなら、試しにBingで私が良く使う「秋月電子」と検索してみてください。多分、最初のページは秋月電子とは無関係の他の電子部品販売サイトで埋め尽くされているはずです。と思って試してみたら、2番目に表示されていました。悔しいので更に…と思いましたが、主題から外れるのでやめておきます。

実績ある出版社の書籍でも間違っていることもある

 インターネット上の情報には間違いが多いと書きましたが、実績ある出版社の書籍でも間違っていることがあります。

 特に私が経験したのは、「フォト・ダイオード」と呼ばれる光に反応するセンサーの使い方です。この間違いにはまって、書籍の通りにオペアンプと呼ばれるICの入力と出力の間にフォトダイオードを入れると、必要な感度を得られずに100MΩなどという非常に高価な高抵抗が必要になったり、光源を強くするために何十ワットもの超高輝度LEDを使ってみたり、それでもまともに動きません。

 しかも、同じ間違いをしている人が過去に3人も居ました。理由を聞くと、その世界では第一人者と言われるようなお偉い教授の書いた、教科書としての採用例の多い、古典的な本のページを皆さん示されます。

 実績のある出版社でも、実際に書いているのはひとりの個人です。しかも、お偉い教授であっても、間違いはあります。そして、お偉い教授であればあるほど、出版社の担当者も疑うことをしません。

 間違った情報を専門誌に書いてしまった私が言うのですから間違いありません。もちろん、気付いた次の号で訂正を掲載してもらいました。

 私が一番尊敬している出版社の編集者は、自分で相当勉強している上に、他の筆者の書いたことを出版前に私に裏を取る確認作業までしていました。そのこと自体は無償でしたが、あとでいっぱい美味しい思いをさせていただきました。

単純ミス?

 本来は最初に書くべきかもしれませんが、勘違いによるミスが一番多いかもしれません。ICが動く電圧が3.3Vだと思っていたら5Vだったり、ICが新製品になったら改良されてバッテリーの過放電を防ぐために一定の電圧未満では動かなくなっていたりなどです。

 どうしても一人で設計していると、この手のミスはしょっちゅう起きます。自慢ではありませんが、私は学生時代から忘れ物は多く、なにかをしようと思って行ったら目的を忘れて戻るなど、ミスの王者ミスターミス(どっちなんだ?)だったりします。

 こんなときは他人の目が有効です。あるいは、気分転換してみるのも良いでしょう。私もプログラムのバグを帰りの電車でリストを眺めてる10分程度の時間で発見したことが何度もあります。

それでも動かないときは?

  • 一晩寝かせる
  • 友達に見てもらう
  • 詳しくない人でも的確なアドレスがもらえることも

コメント

タイトルとURLをコピーしました